計画策定は市町村の2割

 

自治体の住宅政策重要

現地生産型産業の住宅業界は、同時に工務店など地元の事業者が施工する点で極めて地域循環型。

そのため、地方自治体による住宅政策が重要だが各地方の自治体が策定することとされている「住生活基本計画」について、

市町村レベルでは2割程度の策定に止まり、6割以上が策定を予定していない状態だ。

一方で、独自施策で地元工務店の受注増に成功している自治体も増えている。

あらためて”地方の住宅”の在り方が重要になってきている。

 

「住生活基本計画」は住生活基本法に基づいて、国・地方自治体がそれぞれ策定することとされている。国土交通省によると、全国1778市区町村のうち、今年2月時点で計画を策定しているのは174自治体。既に策定してある「住宅マスタープラン」を計画として活用している市区町村が222自治体で、両方合わせても22.3%に止まる。一方、「策定予定がない」と回答した市区町村は1151自治体(64.7%)にのぼった。

 法律に基づいて、国や地方自治体が10年程度の期間の行動計画を策定するという仕組みは、地方分権の流れの中で、柱となる政策手法の一つだ。90年代以降、地方分権が進められてきた福祉分野では、例えば「次世代育成支援行動計画(子育て支援計画)」があり、市区町村の90%が策定している。この点からいえば、住宅政策分野では地方分権が進んでいない現状がうかがえる。

 現在、国レベルでの住宅政策では、少子化高齢化や人口・世帯数の減少への対応が大きな課題となっているが、地方によって置かれている状況は大きく異なる。日本はマクロレベルでは人口は減少局面に入っており、半数の県が2015年までに世帯数のピークを迎える。ところが、東京都は2020年まで増加局面が続く予定で、全国一律では現在直面する課題には対応できない。

 空家の問題も同様。東京都や大阪などの大都市圏では団地再生の問題やマンションの売れ残りなどで語られることが多いが、限界集落を抱える自治体では、空家の東海への対応やIターン・Uターン者をどう確保するかといった問題と直結する。当然、リフォームやリノベーションで求められる役割も違ってくる。

 =下表参照=

 

 空家率の都道府県別順位.gif

 

 独自施策によって地元の住宅産業の活性化を成功させている自治体もある。

 山形県庄内町は一昨年4月から「持ち家住宅建設祝金」制度をスタートした。町内居住者が住宅の新築、増築工事を、町内の工務店に頼んだ場合(下請けをさせる場合は町内業者を半分以上にすることが必要)に、こうじひの5%を補助する仕組み。町内の住環境整備と住宅関連業者の進行、消費需要の拡大を図ると同時に、近隣都市への住民の流出を防ぎ、定住を図ることを狙いとしてスタートしたが、昨年度は繰り返し補正予算を組むほど、申し込みが相次いだ。

 近年、観光都市として景観形成にも力を入れている福島県会津若松市はこのほど、官民共同で「会津ハウス」をつくりあげた。地域木材を使用し、地元工務店とうが会津の気候・風土・景観に合った住宅を建築・維持していくオリジナル住宅ブランド。モデル住宅を完成させ、関連事業者対象のセミナーなども積極的に開催している。

 そのほか県レベルでは、地元産材を地域の工務店で新築・増改築した場合に助成する地域循環型の施策が増えている。より現場に近い市区町村レベルでの積極的な施策展開が期待されている。

 

<日本住宅新聞 H22.7.25号記事抜粋>



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