<62>家づくり相談窓口

液状化現象による不同沈下事故に関する法律相談

東日本大震災後に液状化現象による不同沈下事故に関する法律相談が増えています。

液状化現象により建物が不同沈下してしまった。この場合、建築会社が是正工事費用を負担しなければならないのか?

※不同沈下とは・・・ある施設において、場所によって沈下量の異なる地盤沈下を不同沈下、又は、不等沈下という。このような場合、建物が傾いたり路面に凹凸や亀裂を生じるなど、地盤沈下で最も問題となる。建物が傾けば住人にとって不便であり不快となる。

 

まず、基礎設計に瑕疵がないか確認!

①基礎設計に瑕疵があり、地震をきっかけとして不具合現象が生じたもの

当該建物の建築をした建築会社が瑕疵の補修をする義務を負う

②もともとの基礎設計に瑕疵はなく、地震によって不具合現象が生じた場合

→建築会社は瑕疵担保責任を負わない

 

過去の判例から

阪神・淡路大震災により、床の傾斜等の不具合が発生したトラブル(神戸地裁 平成14年11月29日判決)

被告の本件建物の設計・施工。管理に過失があり、それを原因として、本件建物には阪神・淡路大震災前から被害の一部が発生し、阪神・淡路大震災後に被害が発生・拡大したことが認められるので、被告には損害を賠償する責任がある等として、原告の請求を一部認めた。

地震発生したから免責になるとは限りません。まずは、基礎設計に問題があるかどうかを確認しましょう。

 

例えば・・・

①東日本大震災で屋根の瓦が落下・地盤沈下等の事故が発生

②天災地変による不可抗力により発生したものと言える事故の場合

(住宅設計・建築上、瑕疵がない場合)

③瑕疵担保責任を負わない(保守の免責事由にあたる)

④施主が有償で補修工事を行う。

 

住宅の瑕疵担保責任期間

新築住宅に関しては、引き渡しをしてから最低10年間(それ以外の期間を負担するか否かについては約定による)は、構造耐力上主要な部分及び雨水の浸入を防止する部分については、瑕疵担保責任(建築会社保証書の責任)を負う(品確法)。

不可抗力免責の立証責任は住宅会社が負う

例)大震災が発生し特に「周りの家にはなんともないのに、当家だけ不具合が発生している」といったケース。
施主は、なぜ当家だけ?と住宅会社へ問い合わせするでしょう。きちんと建築した住宅会社は、瑕疵なのかを調べなくてはいけません。

①施主は建物瑕疵の存在について主張立証責任を負う。

→例として「6/1000以上の傾斜が建物に発生した」といった事実を施主が主張立証しなければなりません。

②住宅会社は、「当該不具合は、建物の瑕疵に起因して発生しているのでなく、未曽有の大震災に起因したものであり、建物の瑕疵ではないという事実を主張立証する責任を負う。

③免責を反証をするには、施工当時の設計図書や写真を使います。

→施工が問題なく適正になされた事を立証し、建物に瑕疵がないことの反証をする。

設計図書や写真が存在しないと免責の反証ができない

「既に設計図書や写真は廃棄してしまって存在しない」という住宅会社がある。
紛争になってしまった場合、証拠が何よりも重要になる。
免責反証の証拠がないということは、住宅に瑕疵があるともないともいえる状態になる。

建築士法上の書類保管義務

建築士事務所登録をしている住宅会社では、改正建築士法24条の4による設計図書保管期限が15年と長期にわたる。(改正建築士法・・・平成19年6月20日から施行)

施行規則の附則(平成十九年六月十九日国土交通省令第六六号)第4条2項にて、以下の規定あり、平成14年6月20日以降に作成した設計図書は、15年間の書類保管義務がある。

リフォーム図面であっても5年や10年で廃棄して良いということにはなりません。

建設業法上の書類保管義務

建設業法:営業に関する図書を10年間保管する義務がある。

保存すべき営業に関する図書は以下

①発注者から直接建設工事を請け負った建設業者(特定建設業者を除く)の場合
・建設工事の施工上の必要に応じて作成し、又は発注者から受領した完成図
・建設工事の施工上の必要に応じて作成した工事内容に関する発注者との打ち合わせ記録

②特定建設業者の場合
・建設工事の施工上の必要に応じて作成し、又は発注者から受領した完成図
・建設工事の施工上の必要に応じて作成した工事内容に関する発注者との打ち合わせ記録
・施工体系図

震災後にて再確認される設計図書を保管しておく事の重要性

東日本大震災を受け、築年数が相当経過した建物について、屋根瓦の被害をはじめ、建物についてのメンテナンス要請や瑕疵担保責任の要請が多数発生している。

他方で住宅会社の中には、メンテンス要請が来ても、当時の設計図書を廃棄していたり、図面はあるが図面と現場が不一致であるとして、顧客に対して満足な対応ができない会社もあります。

そこで、住宅履歴情報を蓄積をするサービス「あんしんいえかるて」などで情報の管理することも出来ます。
データとして設計図書や性能、住宅のメンテナンスの履歴を確認でき、不測の事態に備えることが重要です。

住宅会社はもちろん、施主自身でも建物の情報を保管しなければいけない時代になってきました。

 

注意事項

掲載した事例などの内容は、参考に留まって下さい。
もし不測の事故が起きた際は、建築会社・法律の専門家(弁護士等)にご相談下さい。
掲載内容を参考にして、万一貴方自身が不利益を受けたとしても、当方では賠償責任等負えません。



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