カナダの持続可能な木材利用とその魅力
カナダの持続可能な木材利用とその魅力
非営利団体カナダ林産業審議会(COFI)および非営利業界団体カナダウッドの日本事務所カナダウッドジャパンはこの度、東京都内でカナダにおける持続可能な森林経営の取り組みに関する説明会を開催。
当日は3人の講師が森林の多様性や持続可能な管理、法的枠組みと監査制度、建設業界の動向、木質ペレットの動向など多岐にわたって解説した。
COFIはカナダのブリティッシュ・コロンビア州(BC州)とアルバータ州の両州政府から州有林の経営権を与えられている一次林産企業によって組織される非営利団体だ。
主な活動内容としては、林産物の品質管理や国内または海外市場に対する普及・啓発活動、市場参入支援などを実施しており、日本事務所は1974年に開設。主に枠組壁工法の普及・啓発活動を行っている。
また、カナダウッドジャパンの上部団体カナダウッドグループはカナダの林産物に関する貿易団体連合で、カナダ連邦政府関連の組織。アジアとヨーロッパにおけるカナダ産林産物の普及促進活動を行っている。
世界の森林面積9%を占めるカナダ
説明会当日は①カナダの持続可能な森林経営の取り組みについて、②建設業界の動向、③木質ペレットの動向――という3つのプログラムについて発表があった。
①ではカナダウッドグループのブルース・セント・ジョン理事長が登壇。カナダの森林面積は世界全体の9%にあたる、約3億6700万haあると言及した。
さらに伐採可能の森林のうちに実際に伐採されるのは年間1パーセント未満となっていることを紹介。
森林の生態系を保護しながら持続可能な木材を供給するとともに、同国先住民との和解を進めながら、きちんとコミットメントを永続的に進めていく方針を説明した。
②ではカナダ林産業審議会/カナダウッドジャパンのショーン・ローラー代表が木造建築市場のトレンドを解説。
カナダでは同国の建築基準法見直しを受け、6階まで木造建築が建てられるように。現在では4~6階建ての建物のうち、9割以上が木造となっているとした。
翻って日本側は同階数の建築物における木造率は低いため、今後シェアが拡大する可能性を指摘。共同住宅や非住宅の需要が強く、木材需要が増加する可能性が高いと予測されていることなどに触れた。
③ではカナダ木質ペレット協会のゴードン・マレー専務理事が登壇。カナダ全土で約50の生産工場があるが、これは山火事などで焼けてしまった木などを原料としており、木質ペレットを作るためにわざわざ何か森林伐採がなされているわけではないとする。
その上でBC州における木質ペレットの生産について独立調査を依頼したところ、その繊維の約85%相当を製材などの関連産業の副産物から調達していたと報告。
残りの15%は、森林から直接供給されるものの、例えば低品質の丸太やおがくずなどを含めた残業物などを活用していることが分かったとした。
日本とカナダでは違いも
その後記者からショーン・ローラー代表に対し、非住宅の木造建築物についての日本とカナダの違いについて質問が及んだ。
同氏は耐火性能を挙げ、カナダではスプリンクラーの性能が認められおり、耐火基準が日本よりも緩やかだと述べる。
その上で日本で木造建築を普及させるには、耐火基準の見直しとコストダウンが必要とした。
また、カナダでは4~6階建ての木造建築については一般のビルダーが多く手掛けていると説明。
日本では中高層木造建築の知識がまだ一般的ではないため、プレカット工場やコンポーネント工場との密接な関係が必要となると話す。
また、大手建設会社も木造建築に取り組んでいるが、構造設計の知識の普及が今後の課題となるとした。
日本住宅新聞提供記事(2024年12月5日号)
詳しくは、NJS日本住宅新聞社ホームページにてご確認下さい。
http://www.jyutaku-news.co.jp