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(一財)ヒートポンプ・蓄熱センター 集合住宅にもヒートポンプ給湯機の採用推進

2050年のカーボンニュートラル実現に向け、CO2排出量の約3割を占める給湯分野は削減ポテンシャルが高く、脱炭素化を図る切り札として、ヒートポンプ給湯機への期待が寄せられている。
一方、家庭部門でのヒートポンプ給湯機の普及はまだ十分ではなく、特に集合住宅における普及率が非常に低いのが現状だ。

こうした中、(一財)ヒートポンプ・蓄熱センターは、「新築集合住宅におけるヒートポンプ給湯機普及促進策検討報告書」を取りまとめ、11月6日に公表した。
同報告書では、給湯設備採用の意思決定者であるマンションデベロッパーやハウスメーカー等へのヒアリング調査を実施。ヒートポンプ給湯機の採用に関する課題・ニーズについて整理を行い、ヒートポンプ給湯機の採用拡大に必要となる施策案の洗い出しを行った。

不動産経済研究所「全国マンション市場動向」によると、首都圏の事業者別集合住宅発売戸数は三井不動産レジデンシャル、野村不動産、住友不動産が上位で、近畿圏ではプレサンスコーポレーション(2021年オープンハウスグループに合併)が継続して首位となっている。

また、分譲マンションと賃貸マンションのシェア上位は総合デベロッパー系が多い一方、賃貸アパートはハウスメーカー系が上位を占める。そして、いずれもシェア上位の事業者は概ねZEH‐M導入実績を有している。

ZEH‐Mの条件は、一定の断熱性能(ZEH基準)・再エネを除いた省エネ率(20%以上)を満たすこととされているが、再エネを含んだ省エネルギー率の達成度により定義が4段階に分類されている。
分類は省エネ率が高い順に、『ZEH‐M』(100%以上)、Nearly ZEH‐M(75%~100%)、ZEH‐M Ready(50~75%)、ZEH‐M Oriented(再エネ導入は不要)と定められている。

ヒアリング調査では、現状はエコジョーズでもZEH‐M Oriented取得が可能であるため、電力会社系列のデベロッパー以外はエコジョーズを標準採用していることなどがわかった。
一方、ヒートポンプ給湯機については、メリットが出やすい物件(太陽光発電を設置可能な物件)、採用しやすいエリア(電力料金が安くガス料金が高いエリア)を中心に採用が検討されている。

また、ヒートポンプ給湯機特有のメリットとして、再エネ化・脱炭素化への貢献、省エネ性・光熱費削減やレジリエンス性の高さ等が挙げられ、これらが正しくエンドユーザーに認知されるよう訴求することで、今後は集合住宅の商品性向上、差別化要因になりうるという意見も多く得られた。一方、ヒートポンプ給湯機のデメリットとしては、エコジョーズと比較して、設置スペース制約があること、機器・施工コストが高いこと、調達・施工に関する情報が少なく調整に手間を要すること、エンドユーザー人気の高い床暖房への対応が難しいことが挙げられた。

そして、現状、ZEH‐M Orientedはエコジョーズを採用しても取得可能で、上位ランクであるZEH‐M Readyは再エネ設備導入が難しいことから取得困難であるので、ZEH達成のためにヒートポンプ給湯機を採用するインセンティブがない状況だ。
このため、エコジョーズではなくヒートポンプ給湯機を採用しなければ達成できない、ZEH‐M OrientedとZEH‐M Readyとの中間的な基準を設けられれば、デベロッパーも採用を進める可能性があるとした。

同センターは、ヒートポンプ給湯機採用のインセンティブをつくる施策の1つとして、「ZEH新基準の新設」を挙げる。
エンドユーザーが補助金・減税を期待して新ZEH基準の住宅を選択することや、ZEH標準化を掲げている大手マンションデベロッパーを中心に、新ZEH基準達成のためにヒートポンプ給湯機採用が活発化することが期待されている。



日本住宅新聞提供記事(2024年11月25日号)
詳しくは、NJS日本住宅新聞社ホームページにてご確認下さい。
http://www.jyutaku-news.co.jp


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