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間取りの自由度と低コスト両立 注文住宅を変える独自構法 ㈱AQ Group

少子高齢化や土地・建材価格の上昇で着工戸数が減少傾向にある。
このため注文住宅を手がける工務店にはデザイン性などの独自性や住宅価格の値ごろ感が求められているところだ。
そこで㈱AQ Group(さいたま市)は注文住宅の特長である「自由度」を高めるオリジナル構法「AQダイナミック構法」を展開する。不要な柱や壁を取り除き、大空間を実現させつつ、耐震強度も確保するが、コストは普及価格帯に抑える。

「AQダイナミック構法」は3階建て以下の木造住宅で使える構法だ。
特長は間取り変更がしやすい「可変性」や、吹き抜けの大空間が実現できる「自由度」、同社がこだわりをもって取り組む「耐震性能3」、そしてこれらの性能を適正価格で提供する「低コスト」だ。

可変性と自由度を実現しつつ耐震等級3を確保するためには「高倍率な耐力壁と水平構面の採用が重要」と、商品開発部の担当者は指摘する。
そこで同社は通常の耐力壁の6枚分の強さとなる壁倍率15倍のオリジナル耐力壁「8トン壁」を展開する。
このほか3、5、9倍と様々な倍率を用意する。
このほか幅についても455、600、1365mmとバリエーションを持たせている。

高倍率の壁で建物の外周部を構成することにより、居室空間の柱や耐力壁の数が最小限に抑えられる。
これで間取りの自由度や大空間が実現できるようになる。
商品開発部の担当者は「1mm単位の自由な間取りができる」と説明する。

居室空間の柱や耐力壁の数を最小限に抑えられるメリットは結果的にコストの低減にもつながる。
さらには床下の基礎部分もシンプルな作りにできる。床下の通気・換気環境にも寄与し、住宅の維持保全にもプラスに働く。

コストを普及価格帯に抑えるために部材は基本的に一般流通品を採用する。同社オリジナル体力壁の場合は一般的な構造用合板12 mmを使い、釘のみ普及価格帯のオリジナル品を使う。
商品開発部の担当者は「一般流通品を使うことでAQダイナミック構法の普及拡大ができる」とその狙いについて語った。

耐震性能を確認する狙いから実物大の住宅を振動台テーブルの上で揺らす「実大振動実験」も実施した。
熊本地震など過去に発生した地震や今後発生する可能性が高い首都直下の地震など様々な地震波で試験。
その結果、構造上の損傷はなかったという。

自由度、性能、コストを兼ね備えるAQダイナミック構法は、木造軸組構法からのスムーズな移行が可能だ。
しかし、木造軸組構法に長年取り組んでいる大工ほど「ここに柱がないと壊れてしまう、など思い込みがある方も多い印象」と同社担当者は指摘している。

しかし、昨今の注文住宅を取り巻く市況は厳しい。
少子高齢化や土地・建材価格の上昇で着工戸数が減少傾向にあるためだ。
このため工務店にはデザイン性などの独自性や住宅価格の値ごろ感が求められている。
変革の選択肢として家造りの根幹たる構造を見直すことは重要ではないだろうか。

4~5階建ての木造構法 一般流通品でコスト抑える

AQ Groupは4~5階建て向けのオリジナル木造構法「木のみ構法」も展開している。
木造軸組構法をベースとして木質構造家の稲山正弘東京大学名誉教授と共同で開発した。

4~5階建ては重量が大幅に増加するためAQダイナミック構法と同じ耐力壁では実現が難しい課題があった。
そこで、同社は耐震等級3を目指すため、30~40倍相当の高倍率耐力壁を開発した。
一例としては採光・通風性能と意匠性が確保できる組子格子耐力壁などが挙げられる(写真)。

中大規模木造の建設は特殊金物や特注の大断面集成材を採用するケースが多くコストが上がりやすいが、木のみ構法では一般流通品を採用しているため、コストも抑えられる。

実大振動実験は5階建ての木造建物で実施し、窓や外装材が剥がれ落ちないことを確認した。
実験では旧建設省の告示に従って作成された人工的な地震動「告示波」を用いている。

同社は今後に向け、オリジナルの構造計算のソフトの開発にも取り組み始めている。
中大規模木造は設計者の不足も課題とされているが、この解消にもつなげていく。

独自構法を全国に広める 「フォレストビルダーズ」

AQ Groupは地域工務店や地域ゼネコンで構成する集団「フォレストビルダーズ」を組織する。
その所管部署であるビルダーサポート事業部の担当者は「AQダイナミック構法と木のみ構法を弊社内だけに留めず、全国に広めていきたい」と語る。

フォレストビルダーズに加盟することで同構法が使えるようになる。
住宅分野において加盟会員を拡大するため、工務店の抱える課題を解決につなげていく。担当者は「早期に100社体制を目指す」、「2030年に受注戸数2万戸を目指す」と今後の展望を語った。

特に4号特例の縮小では従来通りの壁量計算を実施した場合、必要壁量が上がり、コスト増につながる。
担当者は「ここに危機感を持つ工務店経営者は非常に多い」と指摘する。

AQダイナミック構法は普及価格帯で耐震等級3が実現でき、加盟工務店になれば工務店の安定経営が学べる場にも参加できる。



日本住宅新聞提供記事(2025年1月25日号)
詳しくは、NJS日本住宅新聞社ホームページにてご確認下さい。
http://www.jyutaku-news.co.jp


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