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独太陽電池大手Qセルズ破綻

中国勢との競争で11年12月期の最終赤字920億円

 独太陽電池メーカー大手のQセルズは2日、法的整理の手続きを申請すると発表した。3日にも独国内の裁判所で手続きを始めるという。同社は太陽電池ブームを追い風に2008年に世界シェア首位に立ったが、中国メーカーなどとの価格競争が激化し、赤字体質に陥っていた。

 Qセルズが3月末に発表した11年12月期決算は、最終損益が8億4600万ユーロ(約920億円)の最終赤字だった。10年12月期は1900万ユーロの黒字をかろうじて確保していたが、「昨年1~9月の間で太陽電池システムの価格が半減した」(Qセルズ)など価格下落に歯止めがかからず、大幅な赤字となった。

 経営再建のため、主力生産拠点をドイツから人件費の安いマレーシアに移管し、国内の従業員を削減するなどコスト削減に取り組んだ。2月には債権者集会を開き、債務の株式化などの財務リストラの承認を得た。しかし、法手続き上の問題で中断を余儀なくされ、「代替案が見つからないため法的整理に入る」(同社)ことを決めた。

 Qセルズは1999年に太陽電池の生産を開始。独政府の再生可能エネルギーの普及促進策に乗り、生産規模を急速に拡大し、08年には世界首位になった。しかし、市場が拡大するにつれ、参入企業も増加。とくに中国メーカーが低価格を武器に欧州市場にも進出し、Qセルズは徐々にシェアを落としていった。

 世界の太陽電池市場は「供給過剰の状態」(欧州金融機関)が続いている。リストラを進める企業が相次ぎ、経営破綻の例も出ている。

 11年には、オバマ米政権の「グリーン・ニューディール」政策の象徴だったベンチャー企業の米ソリンドラが破綻。ドイツでも、同年12月にゾロンなど中堅2社が相次ぎ法的整理に追い込まれた。米ファーストソーラーも人員や販管費の削減などのコスト改革を強化している。

 再生可能エネルギーの世界的な需要拡大を受け、太陽電池市場は今後も成長が見込める。スイスのザラジン銀行によると、12~15年までに年率2割のペースで拡大すると予測している。

 しかし、太陽電池の発電コストは洋上風力発電など他の再生可能エネルギーに比べ依然割高とされており、普及には一段のコスト低減が避けて通れない。激しい価格競争は当面続く見通しで、体力のないメーカーの淘汰が続く可能性がある。

 

日本経済新聞 4月2日掲載記事
日本経済新聞 ホームページ http://www.nikkei.com/



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