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 高断熱のすすめ ~省エネ+健康・快適性を伝える~

住宅の断熱・気密性を向上させるための施策が進んでいる。だが、そのためにコスト増を負担する施主が受け入れてくれなければ、絵に描いた餅だ。施主に納得してもらうにはどうすればよいかを、東京大学名誉教授で日本建築学会長や建築研究所理事長を歴任した村上周三建築環境・省エネルギー機構(IBEC)理事長に聞いた。

インタビュー 建築環境・省エネルギー機構(IBEC)理事長 村上周三氏

住宅の断熱・気密性を向上させる目的として、暖房エネルギーが削減され省エネルギーにつながる、ということが良く言われる。それは節電や地球温暖化防止などの社会貢献はもとより、光熱費削減という金銭的なメリットもあるという点が施主の説得材料として使われやすいからだ。

だが、日本、特に西日本の家では、もともとあまり暖房エネルギーを使っていない。家全体を温める連続暖房が主体の欧米に対し、寒い家のなかで厚着をしてこたつに入るという、間歇(部分)暖房が慣習として根付く日本の家の暖房エネルギー消費量は、欧米や韓国の3分の1~4分の1に過ぎない。だから暖房エネルギーの削減金額だけでは、断熱強化分のコスト回収に長い年月がかかる。「それなら、今までどおり寒い家での、もっと厚着をしていればすぐ春が来て暖かくなる」と言われると、話がそこで終わってしまう。

省エネルギーにどれだけ効果的か(EB=エナジーベネフィット)という視点だけでなく、それ以外に得られる効果(NEB=ノンエナジーベネフィット)にも着目して、両輪で断熱・気密性能向上の意義を語っていくことが必要だ。

日本の既築住宅5000万戸のなかで、等級4レベルの断熱性能を持つ家は1割に満たないとされる。しかし、使っている暖房エネルギーは諸外国に比べ各段に少ない。つまり、日本の家は寒いのだ。ここで断熱性能を上げると、暖かいこたつから寒い廊下やトイレに出たときのヒートショックの危険性が低下し、安全性が向上する。これがNEBだ。騒音の大きい都市部では、断熱性能を上げることで遮音性も格段に向上する。

無断熱住宅の断熱・気密性を上げると、風邪をひきにくくなったり、気管支炎やアトピーが出にくくなったり、不眠が改善されたりという効果が認められたという調査・研究もある。このNEBは一般消費者の関心が非常に高い点だろう。

東日本大震災の折、高断熱住宅では、停電で暖房が使えなくなってもある程度の室温が確保されていたという調査事例もある。このように、シェルターとしての基本性能の向上も重要なNEBだ。

 

(日刊木材新聞 H24.4.24号掲載記事抜粋)

日刊木材新聞ホームページ http://www.n-mokuzai.com



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