政策・補助金等

金融円滑化法後の中小企業対策を

中塚一宏金融担当相は10月1日、来年3月を最後に、金融円滑化法の3度目の延長は行わないと表明した。
制度終了後の金融支援の枠組みについては、金融庁の検査、監督を通じ、現在の取り組みが改善するようにしていくと述べた。

 

同法はリーマン・ショックに伴う景気悪化で、特に中小企業の事業再生を目的に、09年12月施行された時限立法だ。当初は11年3月で期限切れとなっていたが、景気回復が進まず厳しい資金繰りが続く中小企業の現状を踏まえ、2度にわたり延長されている。

同法に基づく中小企業の金融機関に対する借入返済猶予は、申込件数で327万5268件、猶予金額は88兆3751億円(12年3月末時点、住宅ローンを除く)、うち実行件数は302万2673件、実行金額は82兆3022億円にのぼる(東京商工リサーチ集計)。

同法として併行して実施された中小企業への金融支援策であった景気対応緊急保証制度(保証枠36兆円)は、11年3月末まで行われた。こうした金融支援策が木材・建材業界を含め、リーマン・ショック後の中小企業経営破綻を抑制する効果があったことは多くの人が認めるところだ。

しかし、同法はあくまで貸し付け条件等の変更であり、債権放棄ではない。
返済猶予期間中に業績を立て直すことを目的としており、金融機関には経営改善計画も提出している。

問題は同法に基づき、それまで健全分類に変更された300万件強の中小企業金融債権が来年4月以降、どう変わるかである。

同法が設定された09年末から現在まで、日本の景気回復は進まず、むしろ急激な円高、ユーロ高が進行し、海外でも長期化する米国経済の低迷や、欧州財務危機の拡大、さらにはリーマン・ショック後の世界経済の牽引役であった中国の景気の足踏みなど、弱材料には事欠かないのが実情だ。我が国の新設住宅需要も100万戸を大きく下回る水準が常態化している。

さらに14年4月、15年10月と2段階で消費税率を10%まで引き上げることが決まり、今後の景気動向に大きく影響していくるとの見方が強い。

こうしたなか、経営改善計画どおりに進まず来年3月末を迎える中小企業に対し、金融機関が債権区分を見直すのは確実で、その動きはすでに始まっているとも言われる。

 東京商工リサーチはこのほど、金融円滑化法に基づく貸付条件変更利用後の倒産動向をまとめたが、12年1~9月期で162件と前期比50%近い増加になった。
企業の業績改善が進まない状況を反映し、倒産形態も断念型の自己破産や内整理、銀行取引停止が大半を占めていると指摘する。
木材・建材業界も負債額は大きくないものの、件数は増加傾向にあり、その多くが自己破産で、再建型倒産が少ない。

このままでは企業与信は今後、不安定な状態に陥る恐れが強い。
国は同法終了以降の具体的な中小企業金融支援に、どのような姿勢で取り組んでいくのか、明示していく責任がある。

 

(日刊木材新聞 H24.11.13号掲載記事抜粋)

日刊木材新聞ホームページ http://www.n-mokuzai.com



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