与党税制改正大綱、不動産はどう動く
与党が2013年度の与党税制改正大綱を正式決定しました。
住宅ローン減税
延長・拡充が決まりました。期限が切れる2013年末から4年間延長。
消費税増税の2014年4月に合わせ最大控除額を400万円(一部500万円)に引き上げ。
所得税では引き切れない分の住民税軽減は、現行の9万7500円から13万6,500円へ拡充。
措置の効果が限定的な低所得層には現金給付、その具体的な中身が「遅くとも今夏」までには提示されます。
年収や物件価格にもよりますが、現金給付も含め「これでちょうど消費増税分と相殺できるかな」と内外に思わせるレベルで決まるのではないでしょうか。
いずれにせよ、消費増税前に駆け込む必要性はこれで相当程度なくなりました。
消費増税対策については、契約印紙代も2014年4月から5,000円減税です。
(1,000超 5,000万円以下 1万1千円⇒1万円、
5,000超 1億円以下 4万5千円 ⇒4万円)
相続税
たとえば相続人が配偶者と子供2人の場合、これまでは課税価格で8,000万円の財産がないと課税されませんでしたが、改正後は4,800万円以上から課税と、実に4割減。
さらに最高税率が55%に引き上げられます。
相続税の課税割合(死亡者数に対する課税件数)はこれまで4%程度で推移してきたのですが、政府は6%程度に増加すると見ています。
しかしここに地価の上昇が加われば、課税割合はさらに膨らむでしょう。
昭和62年、バブル絶頂期の課税割合は7.9%でした。
東京では現在10%程度と見られますが、20~30%に膨らむ可能性も。
今回の改正は、決して「富裕層への増税」というわけではないようです。
評価の高い住宅を持っていても、1次相続(配偶者への相続)は控除が大きい(配偶者控除:1億6000万円or 法定相続分まで控除)ためそれほど問題ではありませんが、2次相続(親から子)の際は、基礎控除が4割減になる影響で課税対象が普通の人にも及びそうです。
もっとも、評価が8割減となる「特定居住用宅地等に係る特例」の適用対象面積を 330 ㎡(現行 240 ㎡)に拡充することで、少しでも緩和する狙いはあるようですが。
すでに都心部・一部の都市部の地価は一定の底を打ったものと見られます。
米経済は底打ち、EUはとりあえず小康状態、中国も底が近い、日本は政権交代でデフレ政策が外れて出遅れ調整のなか、不動産市場はといえば、オフィスは底打ち兆しで持ち直しそうです。
住宅も賃貸・持ち家も供給抑制的だった流れは今年も同様です。
先述の「特定居住用宅地特例」が330㎡まで8割減となる件、賃貸住宅も対象となるため、資産税強化策としての賃貸住宅建設は活発化する可能性もあります。
賃料の上昇はちょっと期待できませんが、インフレ期待の程度によっては期待利回りが低下、つまり価格上昇-評価額増があるかもしれません。
今回の改正以前に、持ち家・別居の子供は住宅地の評価減を受けられないことに注意が必要です。
子供が相続税減額対象となるためには「持ち家がない」か「同居していること」が条件です。
「親が老人ホーム」では思わぬ課税も
もうひとつ気をつけたいのが、親が「終身利用権付きの老人ホーム」などに入っていた場合。空き家認定、つまり「引っ越したもの」とみなされ、いわゆる小規模宅地の特例は使えません。
電気・ガスも使える状態、家財もあり居住可能な状態にもかかわらず、特例が認められない判例もあります。
ただし、介護が必要であった場合などは別です。
「特別養護老人ホーム」は、その施設の性格を踏まえ「介護を受ける必要がある者」にあたるとみなされるようです。
ただしこの場合でも「建物や敷地の維持管理が行われていたこと」が必要で、廃墟のように放置していた場合は特例を使えませんので注意を。
親が別途で空き家を持っている場合も同じで、相続の際には小規模宅地の特例は使えません。
貸しておけば200平米まで50%減です。
親族に貸す場合、家賃が発生している必要があります。
実務的には親子間で賃貸借契約書を交わし、親は不動産収入の確定申告をすることです。
親族以外なら、自由度の高い定期借家契約だとリスクヘッジになるでしょう。
親が生存中に空き家となった実家は「貸す」か「売るか」ですが、売却する場合は3000万円控除の使える3年以内がお勧めです。
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