住宅消費税支援策が与えるインパクト/長嶋修ニュースレター
不動産価格指数(国土交通省/平成24年8月分)が公表されています。
全国指数は91.7と前年比3.5%の下落。南関東は93.4と前年比-3.8%ですがその内訳を見ると、更地・建物付土地は90.6(対前年同月比-4.6%)、マンションが103.9(対前年同月比-0.4%)と「郊外・駅遠の地価下落」が見てとれます。
このところ「リーマンショック」「東日本大震災」と大きなトピックがあり冴えず、さらにデフレ・世帯数減少といったファンダメンタルズを背景にしつつも、都市部のマンションだけはなんとか持ちこたえているといったところでしょうか。
ただし名古屋方面のマンションは87.8の前年比-8.4%と下落幅が大きく、このところ悪い市況が続いています。
自公政権にかわり「財政出動」「金融緩和」「インフレ目標設定」で、不動産にも注目が集まっています。
既に株式市場・REIT(不動産投資信託)市場は強く反応していますが、このことはやはり、都市部、都心部のマンション価格上昇可能性を示唆しています。
2014年4月に予定されている消費税増税による住宅市場の冷え込みを抑制する意図で、住宅ローン控除(住宅取得等特別控除)が延長される見込みです。
政府は、所得税・住民税控除に加えて、控除しきれない分は現金給付、それでもまかないきれない分について別途の方策を検討するとしており、まさに大盤振る舞いです。
このところ拍車がかかっている住宅ローンの低金利に加え、こうした優遇策を加えると、実質的に、ローン金利負担を政府が行っているに等しく、まさにいま住宅を購入しようとしている方には朗報です。
ただしこの政策は、いま買う人にとっていい政策のようにみえて、住宅市場全体で見れば「空き家対策費も計上」しないと全体のバランスがとれません。
東京都足立区は木造住宅で50万円、非木造で100万円の解体補助費を助成していますが、こうした社会全体のコストを勘案する必要があるわけです。
住宅余剰の中で人口・世帯数減少も同時進行しているのですから、新築を買ったあと、中古住宅になってからの資産価値維持を難しいものにします。
このような特例がなくなった場合には、住宅購入者の取得能力が低下します。
つまり、いま買う人は価格高止まりで買うことになるとも言えるわけです。したがってこのような政策はあくまで目先的なもので、長期的にはマイナス効果もあるとわかった上で行うべきものでしょう。
さらに、数年後に住宅を購入する人のことを考えてみます。たとえば、インフレで物価が上昇していれば住宅建設コストも高まっているほか、給与所得者の生活コストも上昇しています。さらに金利が上昇していれば、同じ支払額で借り入れられる絶対額が減り、これも大きな住宅価格下落圧力です。
また「賃貸住宅空き家増加策」という見方もできますので、家賃下落圧力もあります。
いずれにせよこのような政策が行われるのですから、消費増税前に慌てて買う必要はないわけです。
前回増税時(1997年)ほどの住宅購入駆け込み需要とその反動減といった現象は、今回は大きく発生しないものと思われますが、仮に発生した場合、落ち込み幅は以前より大きなものになるのではないでしょうか。
損得勘定だけで言うなら、落ち込んだあとに買うほうが合理的です。
いずれにしても慌てて買う必要はどこにもないわけです。
政府・与党はさらに、高所得者層の所得税を上げようとしています。
具体的には、所得5,000万円を超える部分に45%(現行は1,800万円超に40%)の最高税率を新設する方針のようです。
さらに相続税も現行の最高税率50%から55%へとやや強化されます。こうした動きは資産の不動産へのシフトを予感させ、都心部の優良立地にあるマンション、高級住宅地、賃貸マンションなどの収益物件の価格上昇可能性があります。
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